私は、ユニバーサルツーリズム総合研究所の斎藤です。
今日は、共生について語ろうと思います。
「今日まで私は生きています」吉田拓郎の歌ではありませんが。
ここにお集まりの皆さんも、生きてユニバーサル旅行に関心がある方々です。ユニバーサル旅行は、バリアフリー旅行とも言います。もう少し広い意味になりますが。ユニバーサル旅行といっても、そんなに難しいものでもなく、又、簡単なわけでもありません。
申し上げるならば身体に問題のある方、身体に障害がある方と一緒に旅行する、共に楽しむ、そんな考えで参加してほしいと思います。
この旅行は一方が、一方的にバリアの人をお世話する、そんな旅行ではありません。
ここで申し上げるのは、共に生きるという考え方です。
たまたま障害がある、障害を持ってしまった。これは誰でもある事で、明日、自分がなるかもしれません。それは若いから、年をとっているからというわけにはいきません。だからと言って人格が否定されたり、人のお荷物のような考えが、かつてはありました。しかし、それが本当でしょうか。片一方の能力が無くなったり欠損したからと言って、その人自身が否定されることではありません。
私は2004年から、バリアフリー旅行のお手伝いをしております。
この旅行のお手伝いをして何が良かったかといえば、車椅子の人や、車椅子に乗って生活している人が、この旅行によって元気になっていく事です。そして自分自身が、その方たちと一体になれて、わたしも元気になっていくことです。
その時、車椅子の方々と『四国お遍路』を行いました。お寺はだいたい高台にあって階段が多いのです。
その車椅子の人、日頃、車椅子を離せない片麻痺の人や、身体に不調がある人が、階段の手すりを使って登るんですよ。百何段を、いやもっとあるかもしれません。一歩一歩、自力で上がっていきます。誰も手伝いません。頼まれれば、お手伝いしますが。安全を見守りますけど・・・。
時間はかかりますが。『踊り場』でもうギブアップかと思うと、上の続きの「階段を登ります」こう宣言して登ってしまうのです。普通の生活の中では考えられない姿です。それによって旅仲間が刺激され、今まで、挑戦しなかった人が「私もやってみよう」となっていきました。そして3年で6回、一人も欠けることなく結願したのです。そして高野山まで行きました。これを見ても、旅によって元気になるということです。
この話に付随して、このお遍路に参加した若い人のお話をしましょう。
この方達は四国にある車の会社から、研修目的で派遣されてきました。若い男女4,5人です。
日ごろ車の修理や、フロント、事務にいる人達です。仕事では、車椅子の人と接触する機会はありません。
その人達がお手伝いということで参加しました。はじめは何をして良いかわかりません。サポーターも積極的には指導できません。ともかくお世話するだけで、精一杯なのです。この若者たちの中には『タメ口』をする人もいます。日頃、お客さんと接触するわけでもありませんから。
ところが若いってのは、すごいですよ。
サポーターの注意や、やっていることを見て、段々と、どうしたら良いか理解して、積極的に動くようになります。そして寝食を一緒にしているうちに仲良くなって、空港では「泣き別れ」です。4泊5日の旅行でですよ。その後、車椅子の方が、一人で羽田から四国へ飛んで、若者の世話で旅をしてきたのです。この様に、若者たちに『何かを感じさせたのです』
私が共生と言うのはこの事なのです。
サポートーすることによって『何かを感じ、見つけてほしいのです』
共に旅行する車椅子の方や、身体に問題のある方には、偏屈や意地悪な方もいます。これは誰にでもある事です。人間には『善も悪』もあるのです。
その中で、サポートーする中で、自分も育って欲しいのです。全部思うように行かないかもしれません。それは当然です。しかし、旅行に参加することによって『何かを感じる』『楽しかった』人間の醜さ、哀れさ、辛さを知ることになるかもしれません。何でも良いのです。旅行によって、新しい世界を知ることになるかもしれません。
先程申し上げましたように、私は、ある旅行社でトラベルサポーターをして、随分お金を使いました。
『車椅子を押して、お世話して、なんでお金を払わなければいけないのか』と、言った人もいます。しかし、このサポーターをした事によって、いろいろな人にお会いし、元気をもらいました。そして一人でも多くの家に閉じこもっているような人が、旅行に出掛けてほしいと願っています。そして元気になってほしいのです。疲れますけど、元気になっていけば、毎日が楽しくなります。意欲も出てきます。そして共に旅するサポーターも元気になれるのです。生きているうちに楽しむしかありません。
『健常者と障害者が、共に楽しむ社会』これが私たちユニバーサルツーリズム総合研究所の考え方です。
私は、ここに参加の皆さん、そしてこれから参加する方々、障害のある方や、他の人たちと共に成長していきたい、共に歩んで行きたいと思っております。
本日は、お忙しいところご清聴くださいましてありがととうございました。