長橋が戦略アドバイザーを務めるおはようトラベル㈱が令和4年度長野県ユニバーサルツーリズム旅行会社招へい事業に昨年に続きJTB総合研究所、近畿日本ツーリスト、日本旅行、阪急交通社の大手4社に交じり10月24日、25日にかけて招へいされました。産官学連携で先進的な信州型ユニバーサルツーリズムを実践する施設「ヘブンスそのはら」「浪合パーク」「原田泰治美術館」や上諏訪温泉でバリアフリー化を実践している宿泊施設「ホテル紅や」「双泉の宿 朱白」を体験、視察しましたので報告します。各施設とも、高齢者・障がい者の受け入れに、安全安心で快適に楽しめるよう工夫を凝らし一生懸命取り組んでいる姿勢が見えました。
田園風景が広がる中にある開放的な雰囲気のランチ場所でした。バリアフリー化されていてユニバーサルツーリズムのお勧めです。主な特徴は次のとおりです。①高速道路飯田インターから15分、昼神温泉から25分でアクセスが良いです。②駐車場から段差がなく店内に入ることができ、途中に多目的トイレが設置されています ③団体、グループ用のスペースがありゆったりとした空間を確保しています。④サラダバーを設置、近隣の農家で取れた新鮮野菜を提供していて種類も多く、生産者の顔が 見えるような工夫もされています。ただブッフェラインの高さは車いすユーザーには少し高すぎる感があるように思えます。⑤施設内にマルシェを併設、買い物も楽しみ。旬の素材を活かした創作料理でおしゃれ感があります。
ロープウェイ乗り場は1階、駐車場から至近。乗り場近くに多目的トイレがあります。ノンステップで車いすのまま乗降可能。前向き乗降だと若干の引っ掛かりを感じるので、後ろ向きでの(後輪での)乗降がスムーズです。乗車後はそのまま車いすブレーキをかけることで固定ベルト等の必要は無い。往路の車いすの向きは進行方向逆方向に向くと、景色が見やすいです。
ロープウェイを降りると天空の遊歩道が整備されていて車いすでも走行できます。坂もあるのでけん引式車椅子補助装置JINRIKIがあると楽に散策できます。センターハウスから先は車いすでは厳しいところもありますがJINRIKIにより「いわなの森遊歩道」を楽にいわなの沢まで楽しむことができます。今回は途中の風の池とほたる池までの森林セラピーとなりました。山岳ガイドの方の説明を聞きながら秋色に染まった森の散策は誰もが癒され、自然の力を感じました。
昼神音泉から車で10分程度、標高1,200mの山間に位置する星空観賞に適した第三セクター運営の施設です。駐車場からバリアフリーで受付がある浪合オフィスへ。館内には貸し出し用の天体望遠鏡や撮影用の三脚がズラリと灘んでいます。一眼レフカメラもあります。先ずこの施設内の大ホールにてパノラマ的に映し出される星空の特別映像を10分間ほど楽しみます。続いて外の鑑賞エリアに移動、このルートも路面はしっかりしていて車いすでの移動も問題ありません。ただ坂道もありますのでJINRIKIがあると安全です。星空鑑賞ポイントではベンチもありますが、レジャーシートなど持参して寝ころびながらの星空観賞が楽です。星空ガイドの女性の説明はとても分かりやすく、照らし出す星空ライト(とても直進性が強く、その天体まで届くのではないかと思うほど)により星の位置、星座の場所を目で追うことができます。宝石箱のような宇宙の美しさ、星座や惑星にロマンを感じ、世知辛い日常を忘れるひと時でした。防寒具やひざ掛け等あるとよいです。
諏訪湖畔にある信州が故郷の原田泰治画伯の美術館はご自身が障がい当事者ということもありユニバーサル美術館としての配慮がされています。障がいをお持ちの方、お年寄りの方への配慮に関してホームページには次のように記載されています。
①車いすが4台常備されております。 ②子供さん、車いすで絵をご覧になられる方のために展示位置を低めにさせていただいております。 ③車いすの方もご利用いただけるエレベーターが設置されております。 ④美術館の入口は全面スロープ、館内は段差のないフロアーとなっております。 ⑤障がい者用(車いす利用)のトイレは一階、二階ともに設けてあります。 ⑦障がい者用の駐車スペースは4台分設けてあります。 ⑦情報コーナーのビデオには字幕表示がされます。
また、目のご不自由な方への配慮として原田泰治さんが描いた絵を立体コピーして、触って楽しむことができるコーナーを設けています。ホームページでは次のようにご案内しています。
抜群の諏訪湖の眺望を誇り、上諏訪温泉を代表する宿、ホテル紅や。高齢者・障がい者や養護学校の受け入れも多くユニバーサルツーリズムの取り組みに積極的な施設です。館内貸し出し車いすは3台ありますが、ほぼ毎日100%利用されているとのことでした。また、館内に16室あるユニバーサルルームも高い稼働率を誇っているとのことです。コロナ禍で団体から個人客にシフトしている中、男性用・女性用と二つあった大浴場の一つをバリアフリー仕様の貸し切りユニバーサルスパへ改修するという高付加価値事業への取り組みを進めています。この貸切風呂では車いすのまま浴槽まで進むことができ、ホテルが考案作成した回転バスボードで車いすユーザーも入浴できる仕組みを創っています。現在多目的トイレは別館2階にしかありませんが、本館1階のカラオケルームを改修して多目的トイレにする計画だそうです。養護学校の先生や介護事業者、当事者からいろいろ学び、どうしたら配慮が必要な方々に居心地の良い空間を提供できるか一生懸命取り組んでいる姿が垣間見られる施設でした。8階・9階に合計16室あるユニバーサルルームは改修に工夫が見られます。2室を1室にするという考えではなく、既存の躯体をいじらず、バスタブを撤去してシャワルームを設置するスタイルとなっています。お風呂は貸し切りユニバーサルスパまたは大浴場をご利用くださいという考え方です。もちろんシャワールーム・トイレの入り口や部屋入り口には段差はありません。畳敷きの和室ですが、車いすのまま部屋は使用できます。
二つの源泉を持つ宿として上諏訪温泉で存在感を示す双泉の宿 朱白もユニバーサルツーリズムに取り組んでいる宿です。館内に6部屋のユニバーサルルームは稼働率が非常に高く、3台の貸し出し車いすはほぼ毎日利用されているとのことでした。施設のバリアフリー対応は「車イス可、貸出用車イス、バリアフリー用トイレ、バリアフリールーム、客室内に洋式トイレあり、館内に多目的トイレあり、アレルギーに配慮した料理への対応可能」等です。
バリアフリー対応和洋室は6室あります。
今回見学、体験させていただきました各施設はともに一生懸命ユニバーサルツーリズムに取り組んでいる姿勢が印象的でした。共通して出てきた言葉が「居心地の良い空間を創りたい」でした。誰もがその居心地の良さで、「また来たい」と思っていただける観光地創りがされていると強く感じました。